2020/10/14 12:16

  SAIブランドコンセプト


何がいつどのくらい採れるのか、すべて「お山しだい」な出羽三山のめぐみ。

昔から人々はお山に入る前、これらを体に取り入れて心身を清めてきました。そうしてお山の環境は「山菜を採る人」ー「料理する人」ー「食べる人」の循環で何百年間も守られてきたのです。

SAI」は、コロナ禍の影響で提供できなくなった、行き場のない山菜を使い、お山の循環を途切れさせないようにとの思いから生まれた商品です。

出羽三山から離れた地に暮らす人たちも、滋味あふれるお山のめぐみを食べて、心身を清め、健やかに暮らせますように。

出羽三山に来られなくても、お山のめぐみを食べる人が増えることで、お山の循環が保たれますように。

そんな願いを込めながら、羽黒山参籠所「斎館」の伊藤新吉料理長が一点一点手作りしています。




  SAIの作り手と羽黒山参籠所 斎館について

斎館は、羽黒山頂の手前に位置する羽黒山参籠所です。明治の神仏分離の際、羽黒山内にあった他の30余坊はすべて取り壊されましたが、華蔵院といわれた1697年創建のこの建物だけ神社の斎館として今に残されました。現在は修験者や信者が精進潔斎する場所として、また一般参拝者や観光客が食事・宿泊する施設としても利用されています。

この斎館を執り仕切るのが伊藤新吉料理長です。伊藤料理長の手がける出羽三山精進料理は、出羽三山の山菜やきのこを中心に、伝統的な調理法を用いつつも現代的な感性で作られています。近年はユネスコ食文化創造都市鶴岡を代表する料理人の1人として、フランスなどで精進料理をふるまう機会もあり、海外からも伊藤料理長の料理を目当てに訪れる人が少なくありません(現在は感染症予防のため制限中)。その料理長が「いつものお山の山菜を、いつもとは違う形で」と開発したのがSAI です。お山のめぐみをそのまま味わってほしいと、丁寧に加工しています。




●3商品の開発ストーリー

「干しわらびの松前」


わらびは春の山菜の代表格ですが、アク抜きに手間がかかる食材です。斎館ではお山で採れたわらびを丁寧にアク抜きした後、お浸しなどにして提供するのが定番です。食べきれないものは保存用に干して乾燥させ、使用する時に水に戻し、炒り煮などにしています。

「干しわらびの松前」を開発するにあたっては、わらびのぬめりを生かした食べ方をと考え、松前漬け風を考案しました。数の子の代わりに水で戻した干しわらびを入れ、風味と旨味が特徴の鶴岡産枝豆を食感と彩りのアクセントに、しょうがと南蛮で全体の味を引き締めています。

 

「山蕗とふきのとうの味噌」


ふきのとうを味噌にする「ふきみそ」は、庄内地方では昔から「ばんけみそ」と呼ばれてきました。斎館でも初春になるとお山のふきのとうのをばんけみそにしています。

山蕗は、ふきのとうが花をつけた後、葉がのびて長く育ったものです。斎館では油で炒めたり煮物にしたりして提供してきました。

今回「山蕗とふきのとうの味噌」を開発するにあたっては、同じ根から生まれる2つの素材を使って、従来とは異なるばんけみそを作ろうとの発想が元になりました。ふきのとうも山蕗も、アク抜きをしっかりした上で加工しているため、「ふきみその苦みが苦手」という人にこそおすすめしたい一品です。

 

「山うどと紫蘇ぼの味噌」


山中に自生し、5月に収穫期を迎える山うどは、栽培ものと違ってほぼ緑色で、形も太く、ごつごつし、香りも味もクセが強い山菜です。

斎館では今まで、この山うどを茹でて胡麻みそ和えなどにして提供してきました。食べきれないものは味噌漬けにして保存し、精進料理の一品として御膳に乗せたり、調味料として豆腐やがんもどきに刻んだりしています。

紫蘇ぼ(しその実)は9月中旬から採れる山菜です。斎館では旬の穂を茎ごと天ぷらにして提供することもありますが、多くは茎についた穂を一本一本しごいて取り、塩漬けにして保存しています。

今回「山うどと紫蘇ぼの味噌」を開発するにあたっては、水で戻した紫蘇ぼに、山うどの味噌づけを調味料として混ぜました。2種類の山菜を合わせることで、味噌はうどの香りと味でありながら、食感は紫蘇ぼという意外性が楽しめます。


●出羽三山と稲わらのストーリー


日本有数の米どころ、庄内平野にそびえる出羽三山は、古くから修験の山としてだけでなく、五穀豊穣を祈る山としても崇められてきました。

そのため稲わらと出羽三山のつながりは深く、毎年稲刈りの時期を迎えると、大晦日に羽黒山山頂で行われる松例祭(しょうれいさい)に向けて、庄内各地から稲わらや稲の綱が奉納されます。そして年末、羽黒山の門前町・手向の若者衆は、それらを使って悪鬼に見立てた巨大なツツガムシを2体製作。松例祭のクライマックスとなる大晦日の夜半には、その2体のツツガムシが一年の汚れの象徴として焼き払われ、新たな年の豊作と豊漁が祈られます。(令和2年12/31の松例祭はコロナ禍対応により一部簡略化の予定)


SAIのパッケージは、その奉納された稲わらを、地域の人が一つ一つ丁寧に編んで作ったものです。庄内平野の米農家の、豊作への祈りが込められた稲わらを、SAI とともにお届けします。

なおこの稲わらパッケージは、商品を取り出した後、ワイン瓶を入れて贈呈用にしたり、野菜を入れて吊るしたりなどさまざまにご活用ください。